プロテインを買おうと思ってオンラインストアを覗くと、棚は色とりどりだ。ホエイ、カゼイン、ソイ、ピー、ライス、ヘンプ、エッグ、ミルク、ウェイトゲイナー、アイソレート、コンセントレート、ハイドロライセート。初心者は、ここで一度立ち止まる。
しかし実は、この棚の 9 割は「ホエイプロテインの微妙な違い」か「ホエイを避けたい人向けの代替品」に分類される。選択肢の多さは錯視で、実際に押さえるべきは 5 種類だけだ。
ホエイ、カゼイン、ソイ、ピー、ライス。この 5 つを目的別に理解すれば、プロテイン棚のほとんどは読み解ける。
この記事では、5 種類それぞれの吸収速度、アミノ酸プロフィール、目的別の使い分けを、主要論文から整理する。読み終わったら、自分にとっての第 1 選択と、第 2 選択が決まる。
第 1 選択——ホエイプロテインが最適である理由
9 種類の必須アミノ酸をバランスよく含み、特にロイシン含有量が高い。消化吸収は速く、トレーニング後の筋タンパク質合成スイッチを即座に入れる。
Morton らの 2018 年のメタアナリシスは、抵抗性トレーニングと併用したプロテイン補給の主軸がホエイであることを示した。体重×1.6g/日 まで摂取量を増やすと筋肥大・筋力効果が増大し、ホエイ中心の試験が統合解析の母体になっている。
ホエイには 3 種類のグレードがある。
- コンセントレート(WPC): タンパク質含有率 70〜80%、乳糖・脂質をある程度含む。もっとも安価で、多くの人にとっての標準選択。
- アイソレート(WPI): タンパク質含有率 90% 以上、乳糖をほぼ除去。乳糖不耐症の人、減量期で脂質を抑えたい人向け。単価は WPC より 20〜40% 高い。
- ハイドロライセート(WPH): 予め分解された形態で吸収がやや速い。ただし価格対効果は低く、一般的な筋トレ目的なら優先度は低い。
初心者は迷わず WPC。乳糖で胃腸が不調な人は WPI。それ以外の選択は、細部の好みの問題になる。
第 2 選択——カゼインは「夜の保険」
カゼインは、牛乳に含まれるタンパク質のうち約 80% を占める遅吸収型タンパク質だ。胃内でゲル状になり、ゆっくりと消化される特性を持つ。
Res らの 2012 年の試験は、就寝前 40g のカゼイン摂取が夜間の筋タンパク質合成率を 22% 上昇させることを示した。寝ている間の 7〜8 時間という長時間の絶食を、血中アミノ酸プロフィールを維持することで筋合成の時間に変える。
実務的には、ホエイをメイン、就寝前だけカゼイン、という二段運用が合理的だ。ただし、就寝前に普通のプロテイン 20〜30g(ホエイでも OK)を摂れば 7〜8 割は同じ効果が出る。カゼインに専用投資する価値があるのは、真剣に筋量最大化を狙う中上級者に限定される。
植物性プロテインの台頭——「動物性に劣る」は過去の話
植物性プロテイン(ソイ、ピー、ライス)は、かつて「動物性より劣る」と一括りにされていた時代があった。しかしこの評価は、最新のエビデンスで覆されている。
Lim らの 2021 年のメタアナリシスは、高齢者の筋量・筋力に対する植物性 vs 動物性プロテインの効果を比較した。結果、総タンパク質摂取量が十分(体重×1.2g/日 以上)であれば、植物性と動物性で有意差は出なかった。
鍵は、アミノ酸プロフィールと摂取量だ。単一植物性タンパクは動物性より筋合成刺激力が弱い傾向があるが、以下の戦略で十分に補える。
- 混合: ピー + ライスの組合せ(市販のブレンド植物性プロテインで標準)でアミノ酸プロフィールを動物性に近づける
- 摂取量を増やす: 1 回のプロテインを 30g に、ホエイで 20g と同等の効果
- ロイシン強化: ロイシン単独を少量(2〜3g)足して、合成の引き金を確実に引く
5 種比較表——目的別の最適解
Whey
最優先・万能
Casein
就寝前・回復
Soy
乳製品NG・女性OK
Pea
ヴィーガン・整う
Rice
低アレルギー
ソイ(大豆) は、牛乳アレルギーの人、ヴィーガンの男性で最もポピュラー。かつて「男性ホルモンに悪影響」と誤解された時期があったが、現在の研究では適量摂取で有意な影響は観察されていない。
ピー(エンドウ豆) は、近年市場が急拡大している植物性プロテインの主役。アミノ酸プロフィールが比較的バランスよく、ライスと組み合わせるとほぼ完全タンパク質になる。環境負荷の低さで選ぶ層が増えている。
ライス(玄米) は、アレルギー耐性が最も高いタンパク質の一つ。牛乳・大豆・エンドウ豆でも反応が出る少数の人向けの最終選択。単独では必須アミノ酸バランスに欠けがあり、ピーとのブレンドが望ましい。
選択のフローチャート
あなたが次の質問に答えれば、最適なプロテインが決まる。
- 牛乳アレルギー/乳糖不耐症/ヴィーガンではない → ホエイ WPC(迷わずこれ)
- 乳糖不耐症だが、ヴィーガンではない → ホエイ WPI
- 牛乳アレルギー or ヴィーガン → ピー + ライスのブレンド
- ヴィーガンで、大豆も避けたい → ピー + ライス のブレンド
- 筋量最大化のため就寝前にも摂りたい → ホエイに加えて カゼイン 40g を就寝前に
実用面で言うと、最初の 3 か月は 1 種類だけ(ホエイ WPC が多数派)で習慣を作る。そこから自分の消化・味・コスト感に合わせて微調整する流れが、もっとも失敗しない。
1 回あたりの用量と総量
Schoenfeld & Aragon 2018 のレビューによれば、1 回のプロテイン摂取で筋タンパク質合成を最大化する目安は、体重×0.4g。体重 70kg なら 1 回 28g ということになる。
この量を 3〜5 回に分散して摂るのが実務的な最適解だ。食事 3 回 + トレ後プロテイン 1 回の計 4 回で、各 25〜35g を目指す。
1 日総量としては、Morton 2018 のメタ解析が示す体重×1.6g/日 が下限で、筋肥大重視なら体重×2.0g/日 まで上げる価値がある。2.0g を超えて 3.3g/日 まで増やしても、Antonio 2016 の 1 年試験で腎機能等の安全性に問題はないとされているが、筋肥大の追加リターンはほぼない。
ブランドで迷ったら
ホエイ WPC の主要ブランドは、価格帯・味・添加物の少なさで以下のように分かれる。
- MyProtein 「Impact Whey Protein」: コストパフォーマンス最強、種類豊富
- Optimum Nutrition 「Gold Standard 100% Whey」: 業界標準、味の完成度が高い
- VALX: 国内生産で安心感、山本義徳監修のレシピ
- iHerb の Sports Research ブランド: 混ぜ物が少なくシンプル、ラボテスト実施
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主要参考文献
- Morton RW et al. (2018). Protein supplementation and resistance training — meta-analysis. Br J Sports Med.
- Res PT et al. (2012). Protein ingestion before sleep improves postexercise overnight recovery. Med Sci Sports Exerc.
- Lim MT et al. (2021). Animal vs plant protein for lean mass and strength in older adults: meta-analysis. Nutrients.
- Schoenfeld BJ & Aragon AA (2018). How much protein can the body use in a single meal for muscle-building? JISSN.
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